六月二十五日(月)の日記

*
この季節どこの喫茶店に入っても空調が効いていて、持ってくる上着のチョイスをしくじると凍えそうになる。
三十代女性でありながらあまりにも冷えに無頓着すぎたなと反省し、ここ一週間ほどはシャワーではなく浴槽にお湯を張ってしっかり入浴するようにしている。

湯船の中で膝を抱えて座っていると、ふと子供の頃に水の中で目が開けられなかったウィークポイントを克服してみようと思い立った。
膝を折ったまま息を止めて、お湯の中に仰向けに沈みこむ。浴槽の底から水面を見上げてみる。私は極度の近視(両目とも0.02とか)なんだけど入浴中は裸眼だ。だから水の中の像もぼやけて歪んで見えるんだけど、瞳の表面で膜になった水がレンズの役割を果たすのか、思っていたよりもはっきりした視界ですこし嬉しかった。
すくなくとも矯正なしで部屋の中や外を眺めているときよりもずっとリラックスする。

鼻先から二十センチメートルくらい上の方向に波打った板みたいな、反射のない鏡みたいな水面があって、その向こう側は蛍光灯のあかりでまぶしかった。
私は直方体の水の中にすっぽり入って、ゼリー寄せになった気分でくつろいだ。


*
前に知人にどんな文章を読みたいか尋ねたところ「たとえば朝起きてトーストを焼いて食べて、っていうだけの文章」と言っていた。すこし違ったかもしれない。
そのときは「なるほど?」としか思わなかったけど、最近になってそれについてよく考える。

たとえばカフェのBGMかなにかで流れてきた知らない音楽を聴いていて、まだ歌詞もメロディラインもわからないうちの前奏の、短いギターリフに無性にグッとくることがある。
朝起きてトーストを焼いて食べる説明で、それと同じようなことができたらすごく素敵だろうな。